その怪我、冷やすべき?温めるべき?(冷却編)

ケガをしてしまったとき、応急処置として氷などで冷やすことが一般的となっていますが、氷で冷やしていると「治りが遅くなる」とか「温めた方がよい」というアドバイスを聞くことがあるかもしれません。冷やした方がいいのか、温めた方がいいのか、その判断はむずかしいと感じている人も多いと思います。

2017.11.29
ケガは大きくわけて2通りあり、急にケガをした場合(デッドボールや走塁中に足をくじいたなど)を急性のスポーツ外傷。時間とともに痛みがどんどんと悪化してしまうケガ(投げすぎて肩や肘が痛い、スイング動作を繰り返して腰が痛いなど)を慢性のスポーツ障害と呼んでいます。

基本的には急性のスポーツ外傷が起こったときには氷などを使って患部を冷却するアイシングが推奨されるのですが、ケガをしてから数日、数週間たった状態であればアイシングよりもむしろ患部を温めることを勧められるようになります。これはケガをした部分の組織がどの程度回復してきているのかによって変わります。

急にケガをした場合はケガをした部位が炎症を起こした状態です。炎症症状とは痛みや腫れ、発赤(患部が赤くなる)、発熱(患部がいわゆる熱をもった状態)、正しい動作が行えない等の動きの制限が伴います。この状態を放置しておくとケガをした部位は腫れていき、痛みはどんどん増し、内出血は正常な細胞にまでダメージを及ぼすようになります。

氷を使って患部を冷やすアイシングはこうした状態を「拡げないように抑える」効果が期待できるのです。炎症症状は通常ケガをしてからおよそ48〜72時間程度(2〜3日)続くといわれており、この期間は患部の炎症が拡がらないように冷やすことが優先されます。

一方、慢性的なスポーツ障害の多くは炎症による痛みというよりも、筋肉や関節が硬くなって動きが悪くなることで起こる痛みであったり、血流の低下が原因となっていることが多く、こうしたケースでは「冷やす」ことよりも「温める」ことのほうがより重要になってきます。

ただし投げ過ぎなどによって痛みが出てくる場合は患部周辺(関節や靱帯など)が炎症を起こしていることが考えられるため、投球した後に氷などで冷やすようにすると痛みが軽減されることが多いです。肩や肘に痛みがあるときや、捻挫をしたときには、ビニール袋に氷や氷水を入れて、包帯やバンテージなどで軽く圧迫をしながら冷やすようにしましょう。

時間の目安としては肩は15〜20分程度、肘は10〜15分程度、足首の捻挫であれば15〜20分程度ですが、痛みの感覚がなくなり、冷たいという感覚も感じなくなってからおよそ5分程度を目安に冷やすようにするとよいでしょう。

次回は温めた方がいいケースについてお話したいと思います。


著者プロフィール

アスレティックトレーナーの西村典子さん
アスレティックトレーナー/西村典子(にしむらのりこ)
東海大学スポーツ教育センター所属、東海大学硬式野球部アスレティックトレーナー。日本体育協会公認アスレティックトレーナー、NSCA-CSCS, NSCA-CPT。学生スポーツを中心としたトレーナー活動を行う一方で、スポーツ傷害予防や応急処置、トレーニングやコンディショニングに関する教育啓蒙活動を行う。また一般を対象としたストレッチ講習会、トレーニング指導、小中学生を対象としたスポーツ教室でのウォームアップやクールダウンといったさまざまな年齢層への活動がある。一般雑誌、専門誌、ネットメディアなどでも取材・執筆活動中。
大阪府富田林市出身。奈良女子大学文学部教育学科体育学専攻卒。


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