【堺ビッグボーイズ】「勝つための野球」から「自ら動ける、将来に活きる野球、伸ばす野球」へ(前編)

2017.12.07
DeNA・筒香、西武・森の出身チーム、ということ以上にその取り組みが注目を集める堺ビッグボーイズ。以前は日本中のどこでも見られたような指導者が声を荒げる光景が広がっていたそうだが、現在、そんな様子は全くない。どういう経緯でチームは変わり、どんな指導を目指すのか。自身も9年間監督を務めた瀬野竜之介代表に話を聞いた。

――チーム方針、指導で一番大切にしていることを教えてください。
「なにはさておき1番は楽しいということです。子どもたちに「早く明日にならないかな」って思って来てもらうかです。それを1番大事にしています」

――ホームページで公開している堺ビッグボーイズの紹介動画には野球以外のシーンも多くありました。運動会やバーベキューを開催するようになったいきさつを教えてください。
「それも楽しみにつながると思うんですけど、子どもの頃って野球もそうですけど家族とも有意義な時間を過ごしたり旅行したりとか、いろんなことをした方がいいなぁと思うんですよね。あんまり野球ばっかりに偏ってしまうといろんなバランスが良くないなぁと。特に小学校のチームは野球以外のこともよくやって練習時間もそう長くならないようにして、家族と過ごす時間であったり趣味を持つ時間であったり、そういう時間を過ごす方がいいんじゃないかなと思ってます」

――運動会は保護者の方も参加されるんですよね?
「せっかくなんでお父さんお母さんも楽しんでもらったほうが家族の会話も明るくなるし前向きになるし、あんまりくたくたになって勝った負けたばっかりやってるとそういう話題ばっかりになっちゃうと思うんですよ。保護者の人にも楽しんでもらった方が、子どもたちが明るく野球をする理由になると思います」

写真:練習中に楽しそうにポートボールを行う堺ビッグボーイズ小学部の子ども達
楽しそうにポートボールを行う子ども達

――2013年からはロサンゼルス遠征をしているそうですが、これもいきさつを教えてください。
「私自身も幼少の頃から海外に連れて行ってもらう機会があったり、今も仕事の関係で海外に行かせてもらうことが結構多いんです。そこで見たものから受けた影響が私自身も凄く多くて、これを子どもの時に目にするっていうのは大人と違ってすごく人生に影響するというか、プラスになるんじゃないかなと思って始めたのがきっかけです」

――チーム方針は最初から今のものだったんですか?
「22歳から9年間監督をしまして、当時はご多分にもれずガンガンやってました。「勝つことが全てだ!」と、そういう時代もありました」

――指導が「勝つための野球」から「考える野球、伸ばす野球」に変わった経緯・いきさつを教えてください。
「監督をやっていた最後の2年で全国優勝できたんですよね。その後世界大会にも行かせてもらっていい経験させてもらったんですけど、うちのチームもそうですけど、うち以外のチームを見てみてもその当時、強豪といわれている、いわゆる勝っているチームから、その先を見ると伸び悩んでしまっている選手がとても多いなと感じました。ケガをした、(野球を)辞めたという選手が非常に多くて。なんでこんなに一生懸命やってるのにこうなるんかな、っていう疑問がありました。
監督を離れて2年後にチームの代表になって、いろんな野球の現場を見てまわったんですが、この理由はどこにあるんだろうってずっと考えてまして。その中でいろんな出会いがあってこれはやり方変えなあかんなぁと。それで今から8年ほど前に今みたいな指導にガラッと変えました。
当時メジャーリーグでスカウトをしていた方に非常にお世話になってまして、この人と話してると勉強になることがすごく多いんです。中学部のスーパーバイザーになってもらって、やり方全部アドバイスしてくださいと。5年間入ってもらって、何度変わったかはわからないですけど(笑)、今のやり方に変えたのがそのぐらいです」

写真:室内練習場でノックを受けてる堺ビッグボーイズ小学部の選手達
室内練習場でのノックの様子

――海外では指導者が怒鳴る光景は見られないですか?
「もちろん(笑)。日本の良いところもたくさんあると思うんですよ。向こうがすべていいと言うつもりはないけど、少なくとも参考にするべき点はたくさんあるなと。もっとこうなれば良くなるのになというところを取り入れて、その中に押し付けない、答えを与えすぎない、これは学ぶべきだなというふうに思って取り入れました」

――のびのび楽しい雰囲気ですがこれをしたら怒るという基準のようなものはありますか?
「チームに厳守事項があっていわゆる規律ですよね。これはチームの憲法だから必ず守ろう。これは出来なかったら場合によっては、帰ってもらったりすることもあるよ。ただそれ以外はのびのび楽しくやってくれたらいいと言ってます。
その中に当時、前述のメジャーリーグのスカウトの方からは「自主練習を土日に必ず入れてくれ」と言われたんですよ。練習は昼までにして、その後はマックス2時間の自主練習時間を設けてやってくれと。
『最初のうちは出来ないから、絶対出来ないから。でも出来なくても子どもを怒らないでくれ』というふうに言われたんですよ。なぜなら今までそういう環境にいなかったから。ずっと押し付けられて育ってるんですよ。だから急に自主トレって言われても出来ないよ、でも怒るなよって言われたんですよ。それ言われてなかったらすぐ怒ってたと思います(笑)。

半年かかるって言われたんですよ、出来るまでに。でも1ヶ月、2ヶ月たつと自主練習あるなってわかってるから前もって準備してくる子、自分の課題に取り組む子が出てくるんですよ。それを見ていると周りの選手も「あれ?」ってなってくるんですよ。徐々に出来るようになってきて、中学生の子たちは3ヶ月位で出来るようになりました」

写真:チームで守るべきチーム方針が7つ書かれた紙が額に入れられて掲げられている
チームの憲法ともいうべき7箇条のチーム方針


――チームの厳守事項というのはグラウンドに貼ってあった「7箇条」のことですよね?
「その中には『朝自分で起きる』と言うものもあって、もし起きれなかったら遅刻してもいいと。親にも『子どもを起こさないで』と言ってます。これは出来るようになった、チームに根付いたなと思ったら「7箇条」から消して、もっとこういうのやらないといけないなというのを入れて、何回かこれもアップデートしています」

(取材・撮影:小中翔太)



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