筑波大学川村准教授が考える野球離れの原因、野球のこれから(前編)

2018.02.13

いきなり野球をしないこと、イベント型で野球をやる

――なるほど。それは野球の大きな売りになりそうですね。それ以外に野球をする子ども達を増やすための方法は何かありますか?
「大きくは二つあると考えています。まず一つ目はいきなり野球をしないこと。野球っぽい動きを入れた遊びから始めるのが重要だと思います。野球でまず難しいのがキャッチボールなんです。打つ方はゆっくり投げてやれば結構できます。ちゃんと狙ったところに投げて、キャッチして、また動きながら判断して投げてということは10歳くらいでやっと成立してくるんですね。だからそれくらいの年代までは、プレーに近い形の『タスクゲーム』という形で遊びの要素を入れてやるようにすると良いと思います。

そして二つ目はチームの縛りをなくして、イベント型で野球をやるということ。この日に野球遊びをするよ、という形で子ども達を集めて体の大きさで分けてやらせてみる。同じ学年でチームを作ってしまうと、成長の遅い子どもはどうしても取り残されてしまうんですよ。早生まれの子はどうしたって不利になりますし、生まれた月の影響というのは20歳くらいまで残ると言われています。そういう子が後から体が大きくなって、追い抜いていくケースも多々あるんですよ。でも今のチームのやり方だとそういう子に機会が与えられなくて、辞めてしまうことも多い。それは野球界全体にとっても大きなマイナスですね。そんな子たちの受け皿を作るという意味でも、今のチーム制度は見直した方がいいですね」


――先生は大学生の指導だけではなく、幼児や小学生の年代への普及活動も力を入れていると伺いましたが。
「うちの研究室の大学院生が中心になって、週に一度子ども達に野球遊びをする機会を作っています。さっき話したようにチームではなく、教室というわけでもなく、あくまで来られる子どもが来て野球っぽい遊びをしているだけですね。グループも体の大きさで分けるようにしています。お金も月謝ではなく1回来る度に500円という形なので、無理して来ることもありません。大学院生たちも細かいところを教えすぎることなく、子ども達にまずやらせてみるようにしています。最初はグダグダになるんですけど、意外に2回目くらいから遊び方もまとまってくるんですよ。女の子も参加していて、いつも途中で壁にもたれかかるので『楽しくないの?』って聞くと『凄く楽しい!』って言うんですよ(笑)」


取材当日が実際に子ども達の野球遊びの日で、実際にその様子も見せてもらった。川村監督の話すように、大学院生は簡単なやり方を教えるだけで、本当に一緒に遊んでいるという様子だった。ルールも必要最低限であり、ボールを打った子どもは走らずにその場で喜んでいるという光景も見られた。服装、帽子も自由であり、いわゆる「野球教室」とは趣が全く異なっていたが、とにかく楽しそうに遊ぶ子どもたちの姿が印象的だった。





後編は野球をしている子どものうちにやっておいた方が良いこと、指導者に心がけてもらいたいことなどについてお送りします。(取材:西尾典文、撮影:編集部)

(後編)筑波大学川村准教授が考える野球離れの原因、野球のこれから


プロフィール

川村卓(かわむら たかし)
1970年生まれ。北海道出身。札幌開成高校の3年時には主将として夏の甲子園に出場。筑波大学大学院体育研究科修了後、浜頓別高校での指導を経て2000年に筑波大の硬式野球部の監督に就任。現在は准教授としてコーチング、動作分析の研究の傍ら、野球の普及活動にも携わっている。

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