「NPO法人日本少年野球研究所」佐藤洋代表を訪ねて(前編)

埼玉県の行田市、宮代町、熊谷市を拠点として活動を行っているMFT野球スクール。その講師を務める佐藤洋さんは読売ジャイアンツで10年間プレーした後、社会人野球でもコーチを務めた経歴を持つ。元プロ野球選手の指導と聞くと野球の技術向上に特化したものをイメージするかもしれないが、佐藤氏の方針は決してそれだけではないという。そんな佐藤さんにスクールの狙い、取り組みをうかがった。

2018.04.18

20年前から感じた違和感。変えるべき指導者の意識

佐藤さんが少年野球に携わることになったのは、プロ野球を引退して社会人野球のコーチを務めた後の1998年。埼玉県内にあるスポーツメーカーの一事業として野球塾を設立したことがきっかけだった。当時をこう振り返る。

「練習に来る子ども達を見ていると全然楽しそうじゃないんですね。言われたことに対しては『はい!』と答えるんですけど、その受け答えも全く子どもらしくない。大人に言わされてそうしているのがよく分かりました。
自分は少年野球って経験したことがないんですよ。小学校の頃は近所の子ども達で遊びながら野球をしていただけ。チームに入ったのは中学校の野球部が最初でした。だから小学生の頃はとにかく野球がやりたくて仕方なかった。でも野球塾に来る子ども達はそうではなかったんですね。少年野球の現場はこんな感じなのかと思って愕然としたのがスタートです」

佐藤さんが語る通り、本来子ども達は楽しいから野球を始めているはずである。では子ども達から楽しさを奪ってしまう原因はどこにあるのだろうか。

「指導者の問題と親の問題、両面があると思います。まず指導者はどうしても勝つことを求めてしまう。勝負事である以上勝ちたい気持ちが出てくることは自然なことだと思います。でもそれは野球の魅力であり魔力でもあると思うんですよね。勝とうと思うとその時点でできる子どもを偏って起用しますし、ポジションも早くから固定される。そうすると負担が集中して怪我が多くなりますし、早く仕上げる分早く散ってしまう子も増えていると思います。
親もまずすぐ上手くなることを求めるんですね。そうするとどうしても反復練習が多くなる。そうなると子どもは楽しくないですよ。そう感じたのは20年前ですけど、当時から自分はこのままだと野球人口は確実に減るなと思いました。他の人に言っても相手にされませんでしたけど、今では目に見えて減ってきていますからね」

そんな少年野球の実態に危機感を覚えた佐藤さんは『NPO法人日本少年野球研究所』を設立し、その代表に就任。野球界の底辺拡大のための活動を本格化させていくことになる。そんな佐藤さんがまず変えるべきだと考えているのはやはり指導者の意識だという。

「どの指導者の方も子どものためにという思いは同じだと思うんですよね。ただその方向性がずれてしまっている。最近は調べれば技術的なことはいくらでも仕入れることができますし、熱心な指導者は本当によく勉強しています。ただその指導法、技術論を子どもに押しつけてしまうところが問題です。仕入れた情報をすぐ使いたがる指導者が多い。そしてその通りにできないと『何でできないんだ!』と怒る。これでは子どもがやりたくてやっている野球ではなくなりますよ。指導者の知識や経験はあくまで“引き出し”であって、求められたときに出すという姿勢が大事だと思います」
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