【文武両道】松井常夫監督(京都成章)「勉強もちゃんとやって、色んなことがちゃんと出来て、初めて高校野球」

野球をしながら偏差値の高い大学に行くことだけが文武両道ではない。京都教育大出身の松井常夫監督はそう考える。テスト期間中は成績の良し悪しに関わらず、選手の目標に合わせて練習参加か勉強時間を確保するかの選択を認める。京都成章としての文武両道について話をうかがった。

2018.05.02
――野球部は「野球も勉強もよく頑張る」と聞きますが、監督からみていかがでしょうか?
「指定校推薦で行く子もいれば、最後まで自分でがんばって勉強して大学に行く子もいます。去年だったらベンチ入りしてた2人が大阪体育大学に合格したんです。そういうメンバーがいるっていうのが僕は大事だと思ってるんです。野球だけをやっていたんじゃないということを実践する。うちはテスト前は練習時間を短くしますし、テスト勉強に不安のある子は練習させません。そこは生徒に考えさせてやらせています。受験勉強するっていうのが当たり前という事は意識させています。

偏差値の高い学校に行くから『文武両道』 というのも違うと思うんですよね。オール3の子とオール5の子では当然目指すべき大学が違うのは当たり前ですけど、『その大学に行くためにちゃんと勉強もしなければいけない』という中で学生生活を送っているかどうかっていうのが大事だと思うんですよね、文武両道っていうのは」

――松井監督の高校時代は文武両道だったのでしょうか?
「私の高校時代の野球部の監督も勉強に厳しくて、手を抜くことができなかったので自然と勉強していましたね。将来は野球の指導者として甲子園に行きたいという思いがあったので京都教育大学を目指して勉強したんですけどね、現役で受けたら落ちてしまって、それで予備校に行って1年間通って必死に勉強して何とか合格できました。

僕が思うのは、野球ができる期間なんてほんの少しですし、野球だけで飯が食えるわけではないということですね。野球も上手くて勉強も賢くてというのが文武両道ではなくて、苦手だけど授業中がんばって勉強しよう、ヘタクソだけど野球を一生懸命しようというのが文武両道ですよね」

――成績が良くないと部活に参加できないなどの決まりがあるのですか?
「それはあります。テスト期間中も1時間半練習するんですけど、その1時間半を捻出できないのであれば言いに来なさいと。そういう子は、他の部員がグランドで練習している間は教室で勉強して、最後の全体ミーティングだけ入るようにしています。

『成績が悪い子は練習に出るな』、『成績が良い子は練習に出ろ』ということではないんです。
自分で決めた目標点数をとるために、一人一人が自分自身で計画を立てることを大切にしています」


――以前に甲子園準優勝時のキャプテン・澤井芳信さんに話を伺った時「勉強や普段の生活習慣が全て野球に繋がると思って取り組んでいた」とおっしゃっていましたが、その伝統はいまも続いているのでしょうか?
「そうですね。澤井は頭が良くて文章能力もある子でしたね。澤井が言っていることは、僕らが教えてきた全てですよ。僕と奥本先生(創部から指揮を執った前監督)がなんであのチームで勝たせてもらえたか、奥本先生が素晴らしかったっていうのもありますけど、僕も奥本先生も同じ目線でしか生徒を見てなかったんですよね。

『勉強もちゃんとやって、色んなことがちゃんと出来て、初めて高校野球だ』という、絶対にブレない部分があったので猛練習もさせられたと思いますね。指導者がブレたものを持っていると絶対選手の心に伝わってしまうので。そういうのがなかったのが大きかったと思いますね」

――勉強も頑張ることで野球に及ぼされるメリットはどんなものがありますか?
「苦手なことに取り組む、苦手なことから逃げないということですね。これは脳科学の問題になりますが、苦しいことから逃げると脳に『嫌なことから逃げる』という習慣がついてしまいます。『俺は勉強の事からは逃げても、野球のことからは逃げない』と思っていても、絶対に逃げるということを大嶋先生(チームにアドバイスをくれるメンタルトレーナー)が言っていました。つまり、勉強が苦手で苦しくてもそこから逃げない、ということが野球で苦しくなったときに逃げない、ということにつながると言ってるんですよね。

勉強で苦しいことが出てきた時に、野球で苦しいことから逃げずにやってきたという経験が培われていたら、自信を持って戦えるというのはありますよね」
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