筑波大学川村准教授が考える、「速いボールを投げる」前に知っておくべきこと(前編)

速いボールを投げたい。野球をやったことのある人であればたとえピッチャーでなくても誰しもが願うことであろう。速いボールが投げられればそれだけで大きなアドバンテージがあることは間違いない。しかしその思いが裏目に出てしまうこともあるという。そんな危険性について、筑波大学の硬式野球部監督で、野球の動作分析などの研究者として同大学の准教授も務めている川村卓監督に話を聞いた。

2018.06.13

同一年齢、同一トレーニングは良くない


――速いボールを投げたいということに関してはヤキュイクや系列サイトのTimely!WEBでも関心が高く、問合せが非常に多いテーマです。川村先生は多くの選手の事例をご覧になっていると思いますが、どういう特徴があると速いボールが投げられるというのはあるのでしょうか?
「まずボールが速くなることも含めて、パフォーマンスが上がったと感じた時期について本人の感覚ベースになりますが、数百人の大学の野球部員にアンケートをとったことがあります。回答として最も多かったのは中学生時代というものでした。これは身長が伸びる時期に近いものがあります。
投げるボールのスピードに関しては、これもある程度の感覚値になりますが身長の伸びが止まった後くらいに速くなることが多いように感じます」


――身長の伸びと同時ではなく少し後から速くなるということですか?なぜそのようなズレが生じるのでしょう?
「身体が成長するということはまず骨が先に伸びるんですね。その後に骨の周辺にある靭帯や小さい筋肉が伸びるという順番です。小さい筋肉が伸びてからその周りにある大きい筋肉も成長しやすくなるので、ズレが生じるということだと思います。
だから中学時代に身長が一気に伸びて、高校に入学したくらいで筋力トレーニングを本格的に始めるというのは一般的には時期として合っていると思います。ただ成長する時期は個人差があるので、年齢で一律に同じようにトレーニングするというのは本当は良くありません。まだ骨が成長していない選手に負荷をかけすぎるのは危険ですね。小中学生の時期は特に学年ではなく身長によってチーム分けをした方が良いと個人的にはずっと言い続けているのですが、なかなかそのような例は少ないですね」


――その選手の身長がまだ伸びるかどうか見極めるのはなかなか難しいと思うのですが、何か方法はあるのでしょうか?
「研究結果によると手の甲の骨の詰まり具合で分かると言われています。まだ身長が伸び切っていないと骨の密度が低くスカスカに見えるんですね。ただ医療行為以外でレントゲンを撮ることは許されていないので、現実的にはこの方法は難しいです。
あと言われているのは髭の生え方です。硬い髭が生え始めると身長が止まってくるという説があります。ただこれも髭の濃い、薄いには個人差があるので見極めるのは難しいかもしれません。可能であれば身長、体重を毎月測定した記録をずっとデータとして管理しておけると良いのではないかと思います。それも短い期間ではなく、小学校の時に選手登録してそれが中学、高校、大学と引き継がれていくような仕組みがあると良いですよね。
筋力トレーニングの時期もそうですが、速いボールを投げる時期というのも早すぎると危険が伴うと感じています。よく小学生や中学生の子どもを連れた親御さんが、うちの子に速いボールを投げさせたいんですけどどうすれば良いですか?という相談を受けることがあるのですが、身体が成長していない時は危ないのでもう少し待ってくださいと言います」
急激なスピードアップの後は故障に注意!

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