筑波大学川村准教授が考える、「速いボールを投げる」前に知っておくべきこと(後編)

筑波大学准教授で硬式野球部監督の川村卓先生へのインタビュー。今回のテーマは育成年代の選手が速いボールを投げるためのアプローチについて。前編では身体の成長のメカニズムと、その時期を見極めないと故障に繋がるという話だったが、他にも危険性が潜んでいるという。後編ではその具体例と育成年代に行うべきことについてお届けする。

2018.06.15

速いボールを投げたいなら「急がば回れ」




「――(前編では)身体が成長して速いボールを投げられるようになったタイミングが危険だというお話ですが、まだ成長していない小さい子どもの時にもある程度速いボールを投げられる選手もいます。そのような選手は何が違うのでしょうか?
「基本的には身体の使い方が上手だということですね。手足を使ってボールに上手に力を伝達する方法が身についているということだと思います。
子どもの間に数をこなして訓練すればある程度は速くなります。ただ身体が成長していない段階で、完成されすぎてしまうのも故障以外の点でリスクがあります。成長期に身長が伸びた時に感覚にずれが生じてくるんですね。その身体のサイズに合った使い方ができ過ぎてしまい、同じようにやろうとすると今までできていたことができなくなるケースがよくあります。
これは投げる動作に限らず他の動きやスポーツにもあることですね。この現象を『クラムジー』と呼んでいます。そういう意味でも子どもに対しては速いボールを投げることを求めすぎるのは危険だと思います。
ただ中には子どもと言っても成長が早い子もいるんですね。そういう子はある程度上のカテゴリーでやっても良いと思います。サッカーの良い例として飛び級があるじゃないですか。U18のチームにもU15世代の選手が入ったりしますよね。野球でもそういうことができると良いのではないでしょうか」

――身体が成長していない時期に速いボールを求めることの危険性はよく分かりました。ただ身体が成長した時に速いボールを投げられるようになるためにやっておいた方が良いことなどはあるのでしょうか?
「まずはすぐに結果に出なくてもあらゆる動きを取り入れて刺激を与えるということが大事だと思います。経験としてその動きをしたことがあるというのが重要なんですね。
例えばいいなと思って見ていたのは「うんてい」です。投げる動きはキャッチャー、バッターに対して横を向いた時間をどう上手く使うかということが重要です。「うんてい」も進行方向に対して身体を横に向けたまま進むじゃないですか。それに腕だけじゃなくて全身を上手く使わないと進めない。体重が軽い子どもの間であればかかる負荷も大きくありません。あとはサイドステップで走ったり、アップの時にヒップホップのダンスを取り入れたりすることも面白いと思いますね」

速いボールを投げたいと思って焦らないことが重要

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