少年野球のピッチャー連投、そこに潜むリスクとは?

高校野球の甲子園大会が終わるといつも話題となるのは投手の投げすぎに対する問題です。今夏は金足農業の吉田輝星選手が6試合で881球を投げたことが物議を醸していますが、成長期である高校生、そして高校生よりも体が未発達な中学生、小学生にとって、「投げすぎ」はどのくらい体に影響を及ぼすものなのでしょうか。

2018.08.23

成長期の体を理解しよう


成長期の特徴として大きく3つ挙げることができます。

(1)骨端線(こったんせん)が存在する

成長期の骨には骨の端に骨端線と呼ばれる成長線が見られます。この部分には成長軟骨が存在し、骨の新生と分解・吸収を繰り返しながら骨端線に沿って骨が成長していることを示しています。
成長軟骨だけではなく骨そのものも大人と比べると柔らかく、体を支える骨の機能も未成熟であることから、スポーツなどによる強いけん引力や、圧迫力が繰り返し働くと、傷ついたり変形したりしてケガをしやすいといわれています。

(2)自然治癒力が高い

成長期の骨は新陳代謝のサイクルが早いため、大人と比べて自然治癒力が高いことも特徴の1つです。早く治癒するという点ではいいのですが、たとえば骨折した部位をそのまま放置してしまうと、早い段階で変形したまま骨がくっついたり、動きが悪くなったりという問題が生じることがあります。

(3)骨と筋肉の成長スピードが違う

成長期には骨の成長が早く、筋肉の成長は骨よりも遅いことが知られています。骨だけが先にどんどん成長してしまうと、筋肉や腱は骨の成長スピードに追いつくことができずに、常に引っ張られた状態になります。筋肉や腱がゴムのように引き伸ばされた状態でスポーツを続けることは、体の柔軟性を失うだけではなく、場合によっては部分的に切れてしまったり、炎症を引き起こしたりして、痛みを発生させることにつながります。

想定されるケガ

投げすぎによってフォームを崩し、肘が下がった状態での投球動作を繰り返すと、肘の内側に牽引力が働いて痛みを生じるようになります。また骨が柔らかいので、骨端線の部分が本体から引き離されてしまったり(骨端線離開:こったんせんりかい)、肘の内側の靱帯を傷めたりすることがあります。
さらに肘の外側には強い圧迫やひねりによるストレスがかかり続け、肘関節の骨同士がぶつかって軟骨を傷めることがあります(離断性骨軟骨炎:りだんせいこつなんこつえん)
また肘だけではなく、同じ動作を繰り返すことによって腰背部に疲労がたまり、腰椎の疲労骨折を起こすこともあります(腰椎分離症:ようついぶんりしょう)


成長期の体の特徴を理解し、選手をケガから守るためには、同じ部位に何度も繰り返しかかるような動作を過度に行わないことや体力レベルに応じた投球数にとどめるなどの配慮が必要であるといえるでしょう。

成長期の体を知り、大きな負担のかかる連投(投げすぎ)は避けましょう

著者プロフィール

アスレティックトレーナーの西村典子さん
アスレティックトレーナー/西村典子(にしむらのりこ)
日本体育協会公認アスレティックトレーナー、NSCA-CSCS、 NSCA-CPT。東海大学スポーツ教育センター所属。高校、大学など学生スポーツを中心としたトレーナー活動を行う一方で、スポーツ傷害予防や応急処置、トレーニングやコンディショニングに関する教育啓蒙活動を行う。また一般を対象としたストレッチ講習会、トレーニング指導、小中学生を対象としたスポーツ教室でのウォームアップやクールダウンといったさまざまな年齢層への活動がある。一般雑誌、専門誌、ネットメディアなどでも取材・執筆活動中。
大阪府富田林市出身。奈良女子大学文学部教育学科体育学専攻卒。


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