【少年野球質問箱】子供のウォーミングアップは短時間でよい?

全国約7,000人の野球指導者及び保護者から絶大な支持を得ているFacebookページ「少年野球指導者のひとり言」の管理人廣川さんが、お父さんお母さん、指導者の皆さんの少年野球に対する悩みや疑問にお答えします。

2018.10.16

今回の質問・お悩み



「子供のウォーミングアップは短時間でよい?」

息子が街のスポーツ少年団で軟式野球をやっている、野球未経験の母です。チームのレベルは町内ではほぼ無敵、県大会だと2回戦を勝ち上がれないという感じです。

監督さんは子供思いの優しい方なのですが一つだけ不満があります。それはウォーミングアップの時間が極端に短いことです。ベースを軽く2周程度走って、屈伸して、アキレス腱を伸ばして、手首足首を回して終わりです。この間5分くらいでしょうか。そのあとすぐにキャッチボールに入ります。この程度のウォーミングアップで子供が怪我をしないか心配です(特に肩、肘)。町内の他のチームはもっと念入りにダッシュしたり、ストレッチしたりしてウォーミングアップに時間をかけています。

監督さんは「子供は体力がないからウォーミングアップに時間かけすぎるとそれだけで疲れる。体が柔らかいから怪我しない」と真剣に話を聞いてくれません。
ウォーミングアップってそんなに時間をかけなくていいものなのですか?(もちろん内容にもよると思いますが)。

廣川さんのチームではどれくらいの時間をかけて、どのようなウォーミングアップをしていますか?


廣川さんの答え

私はすべての練習メニューには「目的」があるべきだと考えています。

例えばウォーミングアップの時間を単に「体を温めるだけ」と捉えるならば、その時間は限りなく短い時間で体を温める方法を検討して実践すべきだと思います。しかし、この時間を「体力強化」や「様々な体の動きを覚える」など、目的を広く捉えた場合には当然ながら実践すべきことが変わってきます。

私は現在、中学生を指導していますが、小学生の時に限られた動きしか習得していない選手に野球の技術を指導するのはなかなか難しいと感じています。

例えば「まっすぐ走る」という運動しか経験していない選手に投球時の股関節の動きを教えても習得にはとても時間がかかりますし、「体の柔軟性が低い選手は全体的に動作が小さい」「体の柔軟性が高すぎる選手は動作が安定しない」などの傾向があります。

横浜港北ボーイズでのウォームアップメニュー

私は普段、選手に「グラウンドで行うことは練習に限らず、挨拶や準備後片付けなどもすべて『野球が上手くなる』を目的にしよう」と伝えています。これは中学生の場合ですが、うちのチームではキャッチボールの前まではだいたいこんな流れで練習をしています。

【1】ランニング(約500m)

前後左右の列を揃え、足並みを揃えてランニングを行います。
列を揃え、足並みを揃えることで「周囲への目配り」「仲間と呼吸を合わせること」に対する意識を高めることを目的としています。これができない選手は「自分の動作をコントロールする意識」や「連係プレーで仲間に合わせる意識」が高まらないと思っています。

【2】体操

通常のラジオ体操のような体操と「肩甲骨の動き」「股関節の動き」を重視した体操をします。肩甲骨がよく動けばボールを投げる時に肩の仕上がりが速くなりますし、股関節の可動を広げておけばその後のダッシュなどで足がよく動きますし、守備における「球際」も強くなります。

【3】ダッシュ

だいたい10種類くらいのメニューで行います。様々な動きを取り入れ、「動きの速さ」「動きの大きさ」「動きのリズム感」などを養います。真面目に取り組んでいる選手は野球の技術を教えても比較的上達が早いです。

【4】体幹トレーニング

体幹が弱い選手は野球の技術を教えても動作が安定しなかったり、動作の切り替えが遅いなど、技術習得に課題が出てきます。当然ながら故障のリスクも高くなります。そして現代っ子は概して体幹が弱いです。我々が子どもの頃にはこんなトレーニングは必要ありませんでしたが、今は「体幹を強化する時間」を取ってトレーニングに充てています。

時間の目安は【1】〜【3】で30分、【4】で30分くらいかかっています。
【3】と【4】の間には給水の時間を設けています。

小学生の場合は体力や集中力の問題もあるのでここまで時間はかけられないと思いますが、それでも【1】〜【3】で15〜20分、【4】もやるなら更に20分くらいは必要なのではないか?と思います。本音を言うと体幹トレーニングなどはチームで行わず、普段の自主練習で取り組んで頂けるともっと野球の技術練習に時間を割くことができるのですが、なかなか子どもは自主的に取り組んでくれないのと、やってもクオリティに個人差がでてしまうので、チームで取り組むことにしています。

<最後に>

これらを取り組むに際してとても大事なことがあります。それは「目的をちゃんと選手に伝えること」です。選手が目的を意識するかどうかでその質は大きく変わります。
「○○な動きを取り入れることで送球が上手になるような動きを覚えよう」など、「野球が上手くなる」を目標に位置付けることで「ウォーミングアップ」「トレーニング」自体が目的化しないよう、指導者側も配慮が必要だと思います。




*「ご用件」に「少年野球質問箱」と書いて、廣川さんに教えて欲しい悩みや疑問をお送りください。

「廣川さん」プロフィール

廣川寿(ひろかわ ひさし)1969年生まれ。愛媛県出身。全国約7,000人の野球指導者及び保護者から絶大な支持を得ているFacebookページ「少年野球指導者のひとり言」管理人。

【球歴】
えひめ西(現松山)、リトルリーグ、愛媛県立松山北高等学校、甲南大学(阪神大学野球連盟)、リクルート(社会人野球東京支部)

【受賞歴】
■リトルリーグ
-四国大会優勝

■高校野球
-愛媛県中予地区新人戦優勝
-秋季愛媛県大会準優勝(四国大会出場)
-第59回選抜高等学校野球大会出場

■大学野球
-阪神大学野球連盟2部リーグ最優秀投手賞
(→1部昇格)
-阪神大学野球連盟特別賞(3度)
 ・1試合最多奪三振記録樹立(18個/当時)
 ・通算最多奪三振記録樹立(351個/当時)
 ・通算最多登板記録樹立(57試合/当時)
-学生日本代表候補選手選出 など

【野球指導歴】
-学童野球コーチ
-中学硬式野球チームコーチ・監督
-その他高校・社会人野球臨時コーチなど多数。


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