アスレティックトレーナー立花龍司さん指導者講習会レポート(2)

12月15日に市川リトルシニアが主催で行った指導者向けの立花龍司さんの講習会。前編では現在の日本の野球界の問題点、その背景について触れたが、中編では具体的なコーチングの手法についてお届けする。

2018.12.27

コーチが教えるのではなく、選手に気づいてもらう


日本にはスポーツを楽しむという文化がなく、全てが兵士を養成する武道が根源にあることが現在の高圧的な指導に繋がっているという。ではそうではないコーチングとはどういったものになるのだろうか。

「1964年に東京オリンピックがあった時に、海外の指導者が日本のスポーツ現場を見て非常に遅れたやり方だということを指摘します。多くの日本の指導者はその意見に対して耳を塞いだのですが、一部の若い指導者が徐々に変化を起こしていくようになりました。そして1970年代に入り、『提案型』という手法を使う指導者が出てきます。簡単に言うと選手に押し付けるのではなく、『こうしてはどうだろう?』とやり方を提案する手法ですね。

その後に選手に聞いてから提案する『質問提案型』という手法が出てきます。コーチングは方程式のように一つに定まることはなく、常に変化していくものなんですね。そして自分が知る限り、最新の手法というのが少し長いですが『質問、気づき、気づかせ、提案型』というものです。コーチが教えるのではなく、選手に気づいてもらうというものですね。

そこで重要になってくるのが言葉です。言葉とは人間にとって唯一のコミュニケーションツールなんですね。よく昔は『空気を読め』とか『背中を見ろ』みたいなことを言いましたが、それでは通用しません。ちゃんと言葉で伝えることが重要です。これはスポーツに限りません。例えば上司が部下に対して『水を用意してくれ』と言ったら水は運んでくるでしょう。ただ目的が伝わっていないと本当に水を運んでくるだけで役に立たないこともあります。『大災害があった時のために、防災用の水が必要だからそれを用意してくれ』と伝えたら、ちゃんと飲料用の水を必要な量だけ持ってきますよね。ただ水を運べというのは命令(コマンド)だったのですが、その理由や背景を伝えることによってコマンドがミッション、使命に変わってそこで情熱(パッション)が加わってやり方が変わるんです。コマンドからミッションへ。ミッションがパッションを生むということを覚えておいてください。

命令には大した力はありません。そして日本の選手は命令で動いていることが多いです。よくこの話をすると理想論だと言われます。でも『理想』であるならそれを目指すべきだと私は思います」

前編では「学ぶことをやめた時はコーチをやめる時」という話もあったが、学ぶことに熱心な指導者にも落とし穴はあるのだという。

「自分の内から外に対するアンテナが深くて広い人は選手でも指導者でも伸びることは間違いありません。あらゆる情報を拾うことは非常に重要です。ただアンテナがずっと外に向かっていることにも問題があります。拾った情報から判断することの副産物として、ここでも指示待ちになってしまいます。外にばかり目が行っていますから。時に自分だったらどうするか、つまりアンテナを外から内に向けることも大事なんですね。そうやって常に指導法、練習のやる意味を確認することも重要だと思います」
重要なのは上下関係を作らないこと

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