東京農大・勝亦准教授に聞いた「少年野球の現状とあるべき姿」(後編)

子どもの発育、発達についての研究を行い、ジュニア世代への野球の普及活動も積極的に行っている東京農業大学の勝亦陽一准教授。前編では現代の子ども、野球の置かれている現状や、大人が場所を提供することの重要性などについて触れたが、後編では更に踏み込んで少年野球のあり方などについて話を聞いた。

2019.01.29

子ども達が楽しさを得られないまま
野球を辞めてしまうのは大人の責任

*インタビュー前編はこちら

――現在取り組まれている活動のコンセプトは『楽しもう、学ぼう、始めよう』ということでしたが、学ぼうの部分はどういったことを意識されていますか?
「一番知ってもらいたいのは怪我の予防というところです。そのために専門家であるトレーナーの方などにも協力をしてもらって、子どもの年代から怪我を防ぐような知識を子どもにも保護者にも指導者にも伝えていくような取り組みをしています」


――少年野球の年代でも勝利至上主義に走り過ぎて、子どもの健康や体のことがないがしろにされているケースも少なくないですね。
「選択肢をもっと増やすべきですね。中には子どもの頃からガンガンやるチームがあってもいいと思いますが、今は野球イコール練習時間が長くて試合も多い、そして子どもも大人も大変というのが現状です。もっと気軽に参加して楽しめるようなチームが増えていった方が良いと思いますね」


――勝亦先生は選手の生まれ月についてもよく発表されていますが、その観点から今の少年野球に対して提言したいようなことはありますか?
「調べてみるとピッチャー、キャッチャーは4月から6月生まれの子どもが多い傾向にあります。それだけ同じ学年では成長していて、投げる能力がある子が多いからだと思います。ただ逆に1月から3月の早生まれの子でもピッチャーをできてしまうセンスのある子も当然います。そういう子は当然成長も遅いケースが多いですから、故障のリスクも高くなると考えておいた方がいいと思います。そのような背景もあるので、指導者の方はまず子ども達の生まれ月を知ってもらいたいですね」


――他に少年野球、ジュニア世代の指導者や保護者にとって重要だと考えている点はどのようなことがありますか?
「中学校に入学する段階で野球を続けない子どもが多くいます。特に、1月から3月の早生まれの子どもは、他の生まれ月の子どもよりも野球からドロップアウトしてしまう可能性が高いです。野球を辞めてしまう理由は楽しさや有能感を感じられないからで、それは大人が子ども達にそういう評価をしているということです。野球の楽しさや有能感を得られないまま子ども達が野球を辞めてしまっているのであれば、それは大人の責任だと思います。そんな風に野球を辞めてしまう子ども達がたくさん出てきても、それでも体が大きい早熟の子たちだけ集めて勝つことを目指しますか? ということを是非考えてもらいたいですね。
少年野球の指導者、保護者こそ中学、高校、大学以降のことを考えて子どもと接するようにしてもらいたいです。決して勝利を優先していることを否定しているわけではありません。そういったチームもあってもいいと思います。ただそういう方針なのであれば、そのことを子どもや親に説明した上で入団してもらうべきです。チームの理念、方針、それに沿った計画やルールがないチーム、理念とやっていることが異なっているチームが多いよう見えます。そしてそのことが「子どもや親が野球チームを選べない(選ばない,野球離れ)」原因や親同士のもめ事に繋がっているかもしれません。
また、それまでのやり方を踏襲していくことも大事ですが、その意識が強すぎるチームもあるのではないでしょうか。時代や環境は確実に変化していますから、それに合わせてチームの理念や方針も常に考えるなどしてもらいたいですね」
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